生前贈与で不動産の名義を先に変えるとどうなる?
相続に関するご相談を受ける中で、相続が発生してから不動産の名義変更をするのではなく、生きているうちに家族へ名義を移す「生前贈与」を考える方は少なくありません。
「自分の元気なうちに、なるべく家族に負担をかけることなく、分け方を決めておきたい」というお気持ちから、生前贈与を検討される方もいらっしゃいます。
しかし、生前贈与による名義変更と相続登記では、手続きの内容だけでなく、かかる税金や費用などにも違いがあります。「相続の前に名義を変えておいた方がよい」とは一概にはいえません。
そこで今回は、生前贈与による名義変更と相続登記の違いや、生前贈与を検討する際に知っておきたいポイントについて整理します。
生前贈与による名義変更は「相続」とは別の手続き
不動産の名義を変えるという意味では、相続登記も生前贈与による登記も似ているように感じられるかもしれません。
しかし、権利が移る原因やタイミング、かかる税金などには違いがあります。
相続登記は、不動産の所有者が亡くなったことによって相続人に権利が承継される場合に行う登記です。
一方、生前贈与は、贈与する方と贈与を受ける方の合意によって、生前に不動産の所有権を移転するものです。一般的には、贈与契約証書を作成し、それに基づいて所有権移転登記を行います。
そのため、「将来相続する予定だから、先に名義だけ変えておく」というものではなく、贈与によってその時点で不動産の所有権そのものが移ることになります。
相続による名義変更は年間100万件を超えています
法務省の登記統計によると、相続による土地の名義変更の登記は、2025年に1,167,635件にのぼりました。
相続による名義変更が数多く行われている一方で、相続が発生する前に生前贈与によって不動産の名義を変更するという選択肢もあります。
ただし、件数の大小によって、相続と生前贈与のどちらが良いと判断できるものではありません。それぞれの違いを理解したうえで、ご自身の目的やご家族の状況に合った方法を検討することが大切です。
生前贈与には税金や費用もかかります
不動産の生前贈与を検討する際には、登記手続きだけでなく、税金や費用についても確認しておくことが大切です。
贈与を受けた人には贈与税がかかる場合があるほか、不動産取得税がかかる場合もあります。また、登記の際に納める登録免許税についても、相続と贈与では税率が異なります。
そのため、「相続の前に名義を変えておいた方がよい」とは一概にはいえません。不動産の価値や家族構成、ほかの財産の状況、贈与をする目的などによって、生前贈与が適しているかどうかは異なります。
「生前に贈与した方が得」「相続まで待った方が得」と一律に判断することはできないため、手続きや税金についてご不安がある場合は、事前に専門家へ確認しておくと安心です。
生前贈与を検討するときに整理しておきたいこと
生前贈与をすると、その不動産は贈与を受けた人の財産になります。また、その贈与が将来の相続や遺産分割に影響することもあります。
そのため、贈与する人と受け取る人だけでなく、ほかの家族との関係も含めて検討しておくことが大切です。
相談する前に、たとえば次のような点を整理しておくとよいでしょう。
・誰に、どの不動産を贈与したいのか
・なぜ生前に贈与しておきたいのか
・ほかにどのような財産や相続人がいるのか
・贈与に伴う税金や費用はどのくらいになるのか
・将来の相続にどのような影響があるのか
生前贈与は、将来の財産承継を考えるうえで一つの選択肢です。ただし、ご家族の状況や財産の内容によって、適した方法は異なります。
大切なのは、不動産の名義を先に変更すること自体を目的にするのではなく、「誰に、どのように財産を引き継ぎたいのか」という全体像を整理することです。
そのうえで、生前贈与がご自身の希望に合った方法なのかも含めて、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら検討することをおすすめします。
参考資料
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